大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和44(あ)870 決定

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

一 被告人A本人および弁護人田平藤一の各上告趣意について。

所論は、いずれも事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であつて、刑訴法

四〇五条の上告理由にあたらない。

二 弁護人副島次郎の上告趣意のうち憲法違反の所論について。

論旨は、原審が所論の書類を被告人や弁護人には見せることなく、ひそかに受理

して量刑判断の資料にしたこと、ならびに原審が所論の書類を検察官の保釈取消請

求の資料や保釈許可に反対する意見の資料として受理したのが違法であること、を

前提にして、原審の手続および原判決が憲法三七条二項や裁判公開の原則等に違反

する旨主張する。

しかし、記録を調べると、まず、被告人A作成の昭和四四年三月八日付裁判所長

あての書面(記録五八二五丁)の記載に徴すれば、所論の被告人株式会社Bの債権

者や同会社役員等の作成にかかる嘆願書と題する書面五通(記録五七六九丁から五

七九八丁まで)は、原審第三回公判において検察官から被告人Aの情状に関する参

考資料として裁判所に提出され、受理されたものであること、また、第三回公判調

書によれば、その際在廷していた被告人および弁護人は右提出につき異議をとどめ

ていないこと、そして、被告人A作成の前記書面によれば、同被告人は右嘆願書と

題する書面五通の内容に対する反論を書面にしたためて、原審第四回公判後判決言

渡前に原審に提出して受理されたものであることが、それぞれ認められる。そうす

ると、原審は、所論のように右書面五通を被告人や弁護人に見せることなく、ひそ

かに受理して量刑判断の資料にしたものということはできない。

次に、刑訴法上、保釈または保釈取消に関する裁判手続においては、疎明資料で

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ある書類は伝聞証拠であつても差支えなく、また、疎明資料につき被告人または弁

護人に閲覧の機会を与える必要はないものと解せられるから、原審において、検察

官が保釈取消請求の資料ならびに保釈許可に反対する旨の意見の資料として、疎明

趣旨と関連性があると認められる所論の陳情書等の書類(記録五八四三丁から五八

八九丁まで、ならびに記録別冊「意見疎明書類」綴)を裁判所に提出し、裁判所が

これを受理したことをもつて直ちに違法とすることはできない(もとより当事者が、

勾留に関する処分の決定手続のような受訴裁判所における公判手続以外の付随的な

手続を利用し、ことさらに受訴裁判所に対し被告事件につき予断を抱かせるため、

疎明資料の提出に名を籍りて不必要な書類等を提出するごときことは違法であるが、

記録によれば、本件における右書類の提出がかかる場合に該当するものとは認めら

れない。)。

そうすると、所論違憲の主張は、前提を欠き、刑訴法四〇五条の上告理由にあた

らない。

三 弁護人副島次郎の上告趣意のうちその余の所論について。

所論は、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇五条

の上告理由にあたらない。

よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主

文のとおり決定する。

昭和四五年七月二八日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 田 中 二 郎

裁判官 下 村 三 郎

裁判官 松 本 正 雄

裁判官 飯 村 義 美

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裁判官 関 根 小 郷

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